同人作家と孤独について

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僕は3DCGを使った同人作品を作ってなんとか生計をたてています。

どの業界にも大御所がいるように、この業界にも何人も大御所といっていいヒットメーカーが居ます。今日はその中の一人についての話です。

彼の作る作品は、発売となればいつも同人販売サイトや電子書籍販売サイト上で上位にランクインし、実際その作品も素晴らしいものです。実写と見紛うようなリアル志向で、僕も創作を始める前には彼の作品をユーザーとして購入したこともありました。

天才とは、才能に加えその分野で成功するに必要な努力を、努力と感じない人のことだと思うのですが、彼はまさにそう言う人だと思います。

業界で一定のリスペクトを得ているにもかかわらず、彼のSNS上での投稿内容は、自分以外の3D同人作家への罵倒、自分の技術力の高さや金銭的にどれだけ成功したかのアピールに終始しています。

それでも、自分とコミュニケーションを取ろうとする同業者については、取るに足らない存在(実際にはもっと直接的で侮蔑的な言葉ですが)だと遠ざけ、自分が孤高の存在であることを証明しようと必死になっているように見えます。

この動画はドイツに本拠地があるKurzgesagtによって投稿された「孤独感」という動画です。英語版の「LONELINESS」は2500万再生近くされたもので、ご覧になった方も居ると思います。人間がいかに孤独の悪循環に陥り、どうすればそれから抜け出せるかのヒントを与えてくれる動画です。

この中盤では、孤独感を慢性的に感じるようになった人間がどのように振る舞い始めるかという解説があります。

孤独感が慢性化すると、脳は「自己保存モード」に入ります。どこにでも危険と敵意を見出し始めるのです。(中略) 孤独なとき人は社会的シグナルに敏感になります。同時にこのシグナルの「解釈を誤る」傾向を見せるのです。「他者により注意しながら理解を誤る」のです。

件の方は、自分以外の他の作家の動向に注目しながら、彼らの行動の端々に自分への敵意や、自己比較によって優位性を見出します。

また、コミュニケーションの端緒が自分に訪れても、素直にそれを受け入れることができずに憎まれ口をたたくことで、自分が嫌われたのではない「俺が嫌ったんだ」と自己を防衛しているのだと思います。

新たなコミュニケーションから傷つくことを恐れるあまり、コミュニケーションの「発生」自体を摘み取ろうとしてしまうのです。そして「俺が特別だから、特別な誰かにしか俺を理解できない」と振る舞っているのです。

なぜ、このような記事を書いているかというと、僕自身にも経験があるからです。同人作家になる以前、15年ほど前、僕は人付き合いが苦手で友人がいないことをいつも悩んでいました。そのくせ誰かからの誘いは億劫で断り続けるという生活で、デザインの仕事をフリーランスでやるようになった時期には、パニック障害になって心療内科に通っていた時期もあります。人前に出ることに異常に緊張したり、公共交通機関に乗車できなくなったりした時期もありました。

自分はあまり好かれていないんじゃないか?本心で自分と会いたい人間などいないのではないか?そう考えて自分の殻に閉じこもった結果心を病んだのです。

数年前、同人作家として活動し始めた最初の頃にも、僕は自分が如何に売り上げに恵まれてるかといった自己アピールに必死でした(YouTubeをやってたのもこの時期です)。自分に注目を集めたい。誰かに認めてほしいという思いが強かったのだと思います。それは孤独で自分に価値を見いだせていないことの裏返しだったのです。

そういう思いから解放されるきっかけは、創作仲間が増えて他愛もないコミュニケーションがとれる相手が得られたことに他なりません。必要なのは「特別な賞賛」ではなかったんです。「どうでも良い話ができる相手が居ること」それだけだったのです。

動画の最後の方で解決方法についても紹介があります。

医療機関やカウンセラーなどしかるべき相談相手にかかること。なんでもない、利害関係のない誰かとつながってみること。誰か、むかしの知り合いに連絡を取ってみること。それだけが、あなたを回復させると思います。

きっとあなたはこの記事も読むと思います。あなたの作品のファンとして、あなたの人生が良いものになるよう祈っています。

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